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【IT業界】 SIerとは?仕事内容や働くメリット・デメリットを詳しく解説

この記事では、SIerの役割や、就職するメリットやデメリット、将来性などについて解説します。
SIer(エスアイヤー)とは、どのような企業を指すのでしょうか。ITベンダーやSESなど類似用語との違いを含めて、その特徴や仕事内容を詳しく見ていきましょう。SIerの具体的な企業例についても、5つの種類に分けて詳しく紹介。SIerに就職・転職するメリット・デメリットや、その将来性についても解説しています。年収相場なども紹介しているので、仕事選びをする際の参考にしていただければと思います。
SIerとは?定義・担当領域や種類
まずはSIerの基本として、その定義や業務内容、企業タイプの違いについて見ていきましょう。
SIerの定義・役割
SIerとは、「システムインテグレーター」(System Integrator)の略で、システム開発全般をおこなう企業のことです。クライアント企業から要望を聞き出し、それを実現するために必要なシステムを設計・開発して納品します。
クライアント企業のオフィス内に必要なサーバーやネットワークを構築するなどのハードウェアに関する作業や、運用開始後のメンテナンス、ITコンサルティングを提供することもあり、担当する領域は多岐にわたります。
SIerの担当領域
SIerでは、システム開発の上流から下流まで全てを担当します。
1つの企業が全工程を担当する場合もあれば、上流工程と下流工程で別々の企業が担当するなど、1つのプロジェクトに複数のSIerが関わっていることもあります。
SIerは、流通や金融、製造など、業種・業界を問わず、あらゆる分野のシステム開発をする企業です。
多くの場合はクライアント企業から依頼されてシステム開発をおこないますが、自社でソフトウェアやサービスを開発して提供している企業もあります。
ITベンダー・SESとの違い
SIerと混同されやすい言葉として「ITベンダー」と「SES」があります。
「ITベンダー」とは、ソフトウェア・ハードウェアを問わず「IT製品を販売する会社」のことです。
「販売する」という点は共通ですが、SIerは特定の企業からの要望に合わせて製品を開発するのがメイン事業なのに対し、ITベンダーは「既に完成された製品」を不特定多数に販売するという違いがあります。SIerがITベンダーの事業をしていることもあるため、全く別の企業というわけではありません。
「SES」とは、システムエンジニアリングサービス(System Engineering Service)のことで、企業から依頼されて「エンジニアの労働を提供するサービス」を指します。いわゆる「客先常駐エンジニア」を提供するサービスです。
SIerはシステムという「製品」を納品することで報酬を得るのに対し、SES企業は「労働力」を提供して報酬を得るという違いがあります。
SIerとWeb系企業との違い
Web系企業との違いについても確認しておきましょう。
Web系企業とは、WebサイトやWebアプリケーションなど「Web上で動作するプログラム」を開発・運営する企業です。具体的にはポータルサイトのYahoo!や、大手ECサイトの楽天やAmazonなどが該当します。
受託開発よりも「自社サービス」を開発・運営し、そこから直接の売上を得ていることが多い点がSIerとの違いです。SIerでは企業との取引「BtoB」が中心ですが、Web系企業ではエンドカスタマー向けにサービスを提供する「BtoC」が多いという違いもあります。
またWeb系企業では、スピード重視の「アジャイル開発」で開発を進めていくことが多くありますが、SIerでは設計から運用へと順に流れていく「ウォーターフォール開発」が一般的です。
Web系企業で働くメリットとしては、一般的にWeb系の方が働き方の柔軟性が高く、マーケティング・企画力などを鍛えやすいことが挙げられます。一方のSIerでは、緻密なプロジェクトマネジメントのスキルや、ステークホルダーとの調整力を身につけやすい点がメリットです。
SIerの種類と企業例
SIerは、大きく分けると以下の5種類に分類されます。
- メーカー系
- ユーザー系
- 独立系
- 外資系
- コンサル系
それぞれの特徴と具体的な企業例、各タイプのSIerに就職するメリット・デメリットを見ていきましょう。
メーカー系
メリット |
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デメリット |
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メーカー系とは、コンピューターなどのハードウェアメーカーや、ソフトウェア開発会社などの「IT系メーカー」から独立・派生してできたSIerのことです。
親会社から案件を受注することも多く、売上が安定しているという特徴があります。外部企業のシステム開発を担当することも多いため、さまざまな業界の案件を経験できる点もメリットです。
ただし歴史が長い大手のメーカー系SIerの場合、「レガシーシステム」(古いシステム)の保守・運用を担当することもあり、新しい技術を学びにくい環境になることもあるのがデメリットです。
年功序列の傾向が残っていることもあり、実力に応じた給与アップがしにくい傾向もあります。
メーカー系SIerの企業例は以下の通りです。
- 富士通
- NEC
- 日立製作所
ユーザー系
メリット |
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デメリット |
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ユーザー系とは、「IT系以外の企業」から独立・派生してできたSIerのことです。親会社のシステムを開発・運用するだけでなく、外部企業のシステム開発を請け負う場合もあります。
とはいえ外部の仕事は少なく、親会社や同じグループ企業の仕事が多いため、環境の変化が少ないことが特徴です。無理なスケジュールの案件も少ない傾向があります。
ユーザー系では主に企画・設計などの上流工程だけを担当することが多く、プログラミングなどの下流工程を担当することが少ないため、開発などの技術が身につきにくいことは1つのデメリットです。こちらもメーカー系と同様、年功序列の傾向もあります。
ユーザー系SIerの企業例は以下の通りです。
- 日鉄ソリューションズ
- トッパン・フォームズ
独立系
メリット |
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デメリット |
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独立系とは、親会社などが存在せず、SIerとして独立運営されている企業のことです。
親会社・グループ企業などの縛りがないため、さまざまな業種・業界の仕事に携わることができます。扱うシステムの種類が多いため、技術力の高い企業も多く、エンジニアとしてのスキルアップがしやすいことがメリットです。
ただし親会社に頼れない分、継続的に案件獲得をしなければ売上を確保できないため、収益の安定性という点ではメーカー系やユーザー系に劣ります。
請け負う案件によっては厳しいスケジュールを設定されるなど、激務になることもある点がデメリットです。
独立系SIerの企業例は以下の通りとなります。
- 大塚商会
- 富士ソフト
- 日本ユニシス
外資系
メリット |
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デメリット |
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外資系とは、海外企業の日本法人など、グローバル展開をして日本市場に参入しているSIerです。
年功序列ではなく「実力・成果主義」の傾向が強く、努力や成果に応じた給与アップが期待できるというメリットがあります。
デメリットとしては、ある程度完成された汎用的なシステムをカスタマイズ・応用して販売する「パッケージ営業」が多く、オーダーメイドで開発する機会が少ないことが挙げられます。パッケージ営業の場合、担当する商品についての技術は身につきますが、それ以外の技術を扱うスキルが身につきにくいことがデメリットです。
具体的な企業例としては以下が挙げられます。
- 日本オラクル
- アクセンチュア
- シスコシステムズ
コンサル系
メリット |
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デメリット |
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コンサル系とは、単に要望通りシステムを開発するだけでなく、経営戦略のアドバイスなどのコンサルティングを含めたサービスを提供しているSIerです。
企業のシステムを改善する方法を「提案するスキル」や、利益をアップさせる「マーケティング力」などが身につきやすいというメリットがあります。
ただし全体を俯瞰した業務が多いため、システム開発の現場でのプログラミングスキルなどが身につきにくいことがデメリットです。
コンサル系SIerの企業例は以下の通りとなります。
- 野村総合研究所
- アビームコンサルティング
SIerで働く場合の年収相場
SIerで働く場合の年収相場は「400万〜700万円」程度です。
経験・実績があり、プロジェクトマネージャー(PM)やプロジェクトリーダー(PL)などの管理職クラスなら800万円以上というケースも多くあります。
企業の規模によっても年収は異なり、大手SIerであれば年収1,000万円以上も珍しくありません。
SIerで目指せる職種・キャリアパス
SIerで目指せるエンジニア職は主に「技術系」「管理系」の2種類に分かれます。
「技術系」は以下のような領域を主に担当することになります。
- 外部/内部設計
- 開発・テスト
- 保守運用
一方「管理系」は、主に以下の領域を担当する職種です。
- プロジェクトマネジメント
- 人材マネジメント
- コンサルティング
SIerに存在する具体的な職種は以下の通りです。
それぞれ一つずつ紹介します。
職種 | 年収 | 概要 |
---|---|---|
開発エンジニア | 400万~600万 | 上流工程で作成された仕様書などに沿って、プログラミングをする |
保守運用エンジニア | 350万~550万 | リリースされたシステムに対しての保守・運用業務を行う |
企画・設計エンジニア | 500万~600万 | システムの企画・要件定義・設計等を行う |
システムアナリスト | 600万~1,000万以上 | システム開発に必要な分析・調査をする |
インフラエンジニア | 600万~800万 | サーバーやネットワーク構築など「インフラ」に関する業務をする |
R&Dエンジニア | 500万~800万 | 技術研鑽につながる技術の研究をする |
PM/PL | 600万~800万 | 上流工程でプロジェクトの管理をする |
ITコンサルタント | 600万~1,000万以上 | クライアントに問題解決できるITソリューションの導入を提案する |
開発エンジニア
開発エンジニアは、実際に開発に携わる職種です。
SIerでは、企画設計などの上流工程で作成された仕様書などに沿って、必要なコーディング(プログラミング)作業をおこないます。
担当する言語の「プログラミングスキル」が求められる技術系のポジションです。下流工程を担当するため、未経験者が最初に目指す職種に適しています。
年収目安は400万~600万円ほどで、SIerの職種のなかでは平均レベルです。
保守運用エンジニア
保守運用エンジニアは、開発が完了してシステムの稼働がスタートした後の工程を担当します。保守と運用はそれぞれ以下のような領域です。
保 守 | リリース後のサポート システム改善・更新 |
---|---|
運 用 | 障害の未然防止 システムの安定稼働対策 システム監視・障害検知 |
納品したシステムの保守・運用までがサービスに含まれるSIerにとって不可欠な存在です。
最新技術の知識よりも、正確・丁寧な仕事ができるスキルや、ルーチンワークが苦にならないことなどが求められます。
年収目安については、開発エンジニアと同様または若干低い水準です。
企画・設計エンジニア
企画・設計エンジニアは、システムの企画・要件定義・設計などを担当します。一般的にシステムエンジニア(SE)というと、この職種を指すことが多いです。
SIerでは、クライアントの要望に応えるシステムを考案・設計し、開発エンジニアが作業できるように仕様書を作成するなどの仕事をします。
上流工程・下流工程の両方のスキルが必要で、開発エンジニアよりもクリエイティブな思考力や、コミュニケーション力も要求されます。
年収目安は500万~600万円ほどで、担当領域の広さによってはさらに高い年収も狙える職種です。
システムアナリスト
システムアナリストとは、システム開発に必要な分析・調査を中心に担当し、プロジェクトの方向性を導いていく上流工程の職種です。
SIerにおいては、開発に向けた調査や、既存システムの分析などを中心に担当します。クライアント企業の問題解決のための戦略立案や、システム設計なども担当することがある管理系の職種です。
論理的思考力はもちろん、優れた分析・戦略を立案できるほどに多くのプロジェクトに携わった経験・スキルが求められます。
他の職種と比べて年収相場は高く、1,000万円を超えることも珍しくありません。
インフラエンジニア
インフラエンジニアは、サーバーやネットワークの構築などシステムの「インフラ」を担当する職種です。
SIerにおいては、システム稼働に必要なネットワークやサーバーなどのインフラをクライアント企業が利用できるように構築する仕事を担当します。サイバー攻撃から守るセキュリティ構築を担当することもある技術系の職種です。
年収は技術系の平均を上回るレベルで、600万~800万円ほどが相場となります。
R&Dエンジニア
R&D(Research and Development:研究開発)エンジニアは、研究開発を担当する職種です。
SIerのなかには汎用技術はもちろん、AI(Artificial Intelligence:人工知能)やIoT(Internet of Things:モノのインターネット化)といった先端技術の研究開発をおこなっているセンター・部門を持っていることがあります。直接クライアント向けの仕事をするのではなく、社内で技術研鑽につながる技術の研究をするのがR&Dエンジニアです。
システム開発の経験があることはもちろん、先端技術についての深い知見や実績が求められます。年収相場はおよそ500万~800万円です。
PM/PL
PM(プロジェクトマネージャー)やPL(プロジェクトリーダー)は、管理系の職種です。
PMはプロジェクトを成功させるための計画・管理をおこない、PLはプロジェクトが計画通りに実行されるよう開発現場で進行管理をしていきます。
マネジメントスキルやコミュニケーション力はもちろん、多くのプロジェクトに携わった経験・実績も必要です。
上流工程のため年収相場は平均より高く、600万~800万円ほどが相場となります。
ITコンサルタント
ITコンサルタントは、SIerでプロジェクトの最も上流を担当する職種です。
クライアントの抱える問題をヒアリングし、解決のために必要なシステムやITソリューションの導入を提案します。開発の全体計画をまとめていく管理系の職種です。
前述のシステムアナリストと役割が似ていますが、こちらはシステムだけでなく「IT」や「戦略」全般をカバーしている点が異なります。Webやモバイルなども含め、IT系のあらゆる技術を駆使してクライアントのビジネスを成功へ導く仕事です。
管理職としてのコミュニケーション力やマネジメント力だけでなく、IT分野の幅広い知識と実績が必要とされます。
システムアナリストと同様に年収が高い職種です。
その他職種
SIerでは他にも、以下のような職種が会社の運営を支えています。
- 営業・プリセールス
- コーポレートスタッフ
- 事業推進
- 社内SE
「営業・プリセールス」は、クライアントとSIerをつなぐポジションです。システム開発に直接は携わらないものの、プロジェクト案件を獲得し、スムーズに取引を進めていくために働きます。基本的なITの知識が求められますが、営業経験があれば他業種からでも就職しやすい職種です。
人事・総務・経理など一般的な会社に必要な「コーポレートスタッフ」としてSIerに就職するという方法もあります。「事業推進」の部署で、会社としての新たな事業展開などを企画するという選択肢もあるでしょう。
また、クライアント企業のシステムではなく「社内SE」として、自社サービスの開発に携わることも可能です。
SIerで働く5つのメリット
SIerに就職することには、キャリアプラン上どのようなメリットがあるのでしょうか。主な5つのポイントを以下に紹介します。
大規模プロジェクト・大手企業の仕事に参加しやすい
SIerではさまざまな企業の案件に携わり、多くの実績を作ることができます。
大口顧客を持っていることも多く、大規模プロジェクトに携わるチャンスも回ってきやすいことがメリットです。
実績として大手の企業名やプロジェクト名を加えることができれば、エンジニアとしての経歴に大きなプラス要素になります。
キャリアの選択肢が広い
SIerで、いろいろな業界・業種のシステムに携わることは、キャリアの「選択肢」を増やすことにもなります。
「経験済みの業界・業種」が増えることで、さまざまな業界の企業へ就職しやすくなるというメリットです。
プロジェクトを統括するマネジメント系のスキルも身につけやすいため、コンサルタントや設計などの「上流工程」や、PM/PLなどの「マネジメント職」も目指しやすくなります。
コミュニケーション力を磨きやすい
コミュニケーション力など、技術力以外のスキルを身につけやすいこともSIerの特徴です。
クライアントとの折衝やミーティングなども業務に含まれることが多いため、交渉力や営業力など、社会人としてさまざまな企業で通用するスキルを身につけられます。
技術力を高めやすい
エンジニアとしての技術力を高めやすいことも、SIerで働くメリットです。
SIerには優秀なエンジニアが多く、教育体制が充実している企業が多いため、技術力を高めやすい環境が整っています。
研究開発をおこなっている企業も少なくないため、最新技術・知識に触れられる機会が多い点もメリットです。
収入が高い傾向がある
SIerは比較的、下請けの下流工程になることが少ないため、収入が高くなりやすい傾向があります。
前述の通り大規模案件に参画できるケースも多くあるので、潤沢な予算のあるプロジェクトも多く、報酬が極端に低いということは少ない傾向です。
SIerで働く大変さ・デメリット
SIerで働くことはメリットばかりではありません。事前に把握しておくべきデメリット3つを解説します。
必ずしも開発スキルが身につかない
SIerでは多くの技術を学べますが、「開発スキル」については学べる内容が限られることがあります。
SIerに勤めるエンジニアは、担当する案件を選びにくいため、必ずしも先端分野を扱えるとは限りません。
案件によっては開発・納品して完了ということもあり、メンテナンス性や保守・運用のスキルが身につかない可能性もあります。
下流工程だと収入が低くなりやすい
全体的に見ると高い収入が期待できるSIerですが、就職する企業によっては収入が低くなることもあります。
企画・設計などの上流工程から担当できる元請け企業として参画できる案件ではなく、二次請け・三次請けなどで下流工程を担当する場合には、収入が低くなることがあります。
企業の規模や、プロジェクトへの参画状況を確認し、元請けとして参画しやすい企業を選ぶことが重要です。
就職先によっては激務になることがある
SIerでの仕事は、特に下流工程を担当する場合には激務になることもあります。
上流工程を担当する企業の遅れや、急な仕様変更に対応する必要があるなど、納期の厳しい状況が発生することがあるためです。
社内SEなどとは異なり、「外部の状況」が影響しやすいのがSIerのデメリットだといえます。
SIerに就職・転職するために役立つスキル
SIerに就職・転職するには、どのようなスキルがあると有利なのでしょうか。基本として必要な4つのスキルを解説します。
マネジメントスキル
管理・マネジメントのスキルは、SIerで働くうえで大いに役立つものです。
開発の進捗を管理し、チームのメンバーをまとめる「プロジェクトマネジメント」のスキルは、SIerの業務の中心スキルともいえます。
IT系のプロジェクトに限らず、「管理・運営」ができる組織マネジメント力があると、SIerで働くうえで有利です。
管理職や責任者としての何らかの経験があれば、SIerに就職・転職する際のアピールとして使えます。
論理的・分析的思考スキル
顧客の問題について分析し論理的に考えるスキルも、SIerの業務で必要です。
顧客の問題解決をするためには、問題の本質を見抜く分析力や、解決に向けたシステムを組み上げる論理的思考力が求められます。
論理的・分析的思考スキルは、理系に限らず文系にも共通する能力といえるでしょう。実際、IT系・理系の分野で知識や実績がなくても、SIerの業務に向いている人は多くいます。
コミュニケーションスキル
コミュニケーションスキルは、SIerで働くうえで不可欠です。
クライアントの要望を聞き出したり、必要な交渉や連絡をスムーズに進めたりするために、コミュニケーションスキルの高さが求められます。
面接の際はコミュニケーションスキルが高いことをアピールできるように、これまでの経験や実績を整理して、説明の仕方もスムーズになるよう準備しておくことが重要です。
IT系スキル
SIerで働くうえでIT系のスキルが求められることは言うまでもありません。プログラミングのスキルはもちろん、サーバー運用やネットワーク設計など「IT全般」の広い知識が必要です。
SIerへの就職を目指すうえでは、IT全般での実務経験とまではいかなくても、どのような分野が存在し、それぞれがどのように関連しあっているのか、「基本的な知識」を身につけておくことが役立ちます。
SIerの将来性
SIerには「将来性がない」「就職はやめとけ」という意見があります。その一方で「まだまだ将来性がある」という人もいます。それぞれの意見について、どのような根拠が挙げられているのでしょうか。
「将来性がない」という見方の理由
まずは「将来性がない」という意見について、主な3つの理由を紹介します。
- 内製化が進んでいる
- クラウドサービスの普及
- 下請け構造による利益の低下
内製化が進んでいる
1つの根拠は、社内で開発する「内製化」が進んでいて、外注先であるSIerを利用する機会が減るという見方です。
日本情報システム・ユーザー協会の調査(2020年度実施)によると、システム開発の内製化を「実施済」「取組中」と答えた企業は49.7%でした。
とはいえ全ての企業が内製化を実施したわけではありません。また今後も一定数の「内製化を実施しない・できない企業」が存在し続けることも、十分に考えられるでしょう。
クラウドサービスの普及
クラウドサービスの普及も、SIerの将来性がないという意見の根拠として挙げられます。
クラウド型の会計ソフトや顧客管理システムなどの便利なクラウドサービスが登場した結果、企業ごとにオーダーメイドでシステムを開発しなくても済むケースが増えているためです。
とはいえ大規模なシステムの全てをクラウド化することは難しく、クラウドを使わない企業や、クラウドと社内システムを併用するようなケースも残っていくことが考えられます。
下請け構造による利益の低下
下請け構造が一般化した結果、「利益が低下しやすい状況」にあることも、SIerの将来性が危ぶまれる理由の1つです。
SIer業界内では、二次請け・三次請けなどが発生する「多重下請け」の体制が広く定着しています。多重化されていないプロジェクトも存在しますが、多重下請けによって中間マージンが取られ、下請け企業の利益が出にくいこともあるのが現状です。
元請けとなる企業が業績悪化すると、その下に紐づく企業にも資金が流れなくなるという問題も起こります。
その結果、SIer業界の企業数が減少し、今後は市場規模が縮小していくであろうという見方です。
「将来性がある」という見方の理由
一方の「SIerには将来性がある」という見方にも、いくつかの根拠があります。主な3つのポイントを見ていきましょう。
- IT業界全体が深刻な人手不足
- システム更新・保守・管理などのニーズがある
- 大企業・公的機関の需要が見込める
IT業界全体が深刻な人手不足
1つは、IT業界の人手不足を補う存在としてのニーズが見込めるという理由です。
日本のIT業界が深刻な人手不足にあることの根拠としては、「2025年の崖」問題がよく引き合いに出されます。
これは経済産業省が発表した「DXレポート」で指摘された問題で、古いシステムのブラックボックス化や人材不足などにより、2025年以降に年間で最大12兆円の経済損失が発生する可能性があるということです。
その問題解決に貢献する存在として、「ベンダー」つまりSIerなどの企業にも重要な役割があることも指摘されています。人材不足のIT業界を支えるために、今後もニーズがなくならないことが期待できるでしょう。
システム保守・管理・更新などのニーズがある
SIerは、既存システムの保守・運用・更新のためにも重要な存在です。
既存のシステムを保守・管理するニーズは安定して存在することが予想されますが、それだけでなく新しいシステムに置き換える「更新」のニーズも大きいといえます。
前述の「DXレポート」でも指摘されている通り、古いシステムを更新して、新しい技術を導入するニーズは高まっています。そのニーズを満たすために、既存のシステムを開発・運用してきたSIerに対して引き続き仕事が依頼されることは十分に考えられることです。
大企業・公的機関の需要が見込める
SIerは大規模なプロジェクトで活躍する存在として残っていくという見方もあります。
SIerには大企業や公的機関などの大規模なプロジェクトに参加してきた経験が豊富な企業が多く、その対応ノウハウが蓄積されていることが期待できるためです。
また前述の通り大規模なシステムは既製品のクラウドサービスへは置き換えにくいため、オーダーメイドのシステムを開発するケースが多くあります。
大企業・公的機関からの「安定した需要」が期待できることから、SIerにはまだまだ将来性があるという見方ができるでしょう。
SIerについてよくある疑問と回答
SIerへの就職を検討する人が抱きがちな疑問3つについて、それぞれの回答を以下にまとめました。
SIerでフルリモートは難しい?
SIerでも、企業や部署によってはフルリモートで働くことは可能です。
ただし、クライアント企業のオフィス内に出社しないとアクセスできないシステムや、機密情報を扱う場合にはリモートでの作業が難しいこともあります。
そのような問題がなく、オンライン経由で全ての作業を完結できるような案件なら、フルリモートも十分に可能です。
SIerよりもWeb系の方が将来性がある?
SIer・Web系企業のいずれにもメリットがあります。どちらに将来性があり、どちらに就職した方がキャリア形成として賢いのか、一概にはいえません。
Web系企業に就職するメリットは、前述の通り柔軟性が高いことや、マーケティング系のスキルを身につけられることです。
SIerに就職することにも、緻密な品質管理やプロジェクトマネジメントのスキルを身につけやすいというメリットがあります
身につけたいスキルが何かを検討し、それに合った就職先を選ぶことが重要です。
どのSIerに就職するべき?
就職先のSIerを選ぶ際には、基準とする条件の「優先順位」を決めておくことが大切です。
提案力をつけるならコンサル系、実力主義で働きたいなら外資系、幅広いジャンルの仕事をしたいなら独立系など、希望する条件に合ったSIerタイプを選びましょう。
SIerの種類だけでなく、元請け企業か、自社サービスはあるか、どのような分野の仕事を請け負っているかなどの詳細も確認して、希望条件に合った企業を探すことがポイントです。
この記事のまとめ
- SIerとはクライアントの課題解決のためにシステムの設計・開発・運用まで請け負う企業のこと
- さまざまな企業のプロジェクトに携われるなどのメリットがあり、下流工程の企業だと激務になることもある点などがデメリット
- 「将来性がある」という見方の根拠には、IT業界の人材不足や、大規模プロジェクトのニーズがあることなどが挙げられる
